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日本型ブランディングの特質(マーケティング/出頭)

07/07/31

今日は、
アングロサクソン型ブランディングとの
比較で、日本型ブランディングの
特質についてお話しします。
ブランドというのは、
人の知覚、人の頭の中にある
という話をしていて、
頭の中にどんなイメージを
植え付けるのかという、
そういう行為や行動が、
ブランディングという行為です。
そして、日本型のブランディングの
特質というのを、今言ったように、
アングロサクソン型との対比で
みていきます。

■アングロサクソン型ブランディング
先にアングロサクソン型について
話をしますと、基本的に
アングロサクソン型ではブランドというと、
商品ブランドのことを指し示していて、
コーポレートのことは
第一想起に入ってきません。
商品その物をブランドといっている事が多いのです。
これは欧米の本なんか読むときに、
皆さんも注意しないと
誤解してなかなか分かりにくい
ところだと思うのですが、
ブランドというと、
普通の場合は商品を示しています。

簡単な例として、
ジェネラルモーターという大変大きな
会社がアメリカにあります。
そこが出している商品とは
どういうものかというと、
キャデラック、ビュイック、
シボレーなどの自動車です。
これらは、それぞれがブランドです。


これと対比するために、
トヨタを見てみます。
トヨタは、カローラ、カムリ、クラウンなどの
商品ブランドを持っていますが、
カローラというとき、
トヨタカローラって言っています。
商品のブランド名がコーポレート名と
常にパッケージになっています。
それに対して、
ジェネラルモーターキャデラックや
ジェネラルモータービュイックなんて
聞いたことありません。


アングロサクソン型というのは、
コーポレート・ブランドはあるのですが、
商品ブランドでは表に出て来ないで、
商品が独自の世界を形成しています。
一方、日本型のブランディングだと、
コーポレートと商品ブランドは一体化しています。


これは大きな違いで、
例えば日本でもっとも
国際的な企業の一つソニーの
ウォークマンは立派な商品ブランドです。
だけど、日本ではソニーウォークマンです。
このように、ウォークマン自体は
誰でも知っている名前だと思うけど、
日本ではやはりソニーウォークマンということで、
製造元の名前が付随しています。
これは欧米ではあまりないことで、
日本型のブランディングの特質を
表していると思います。
どういう特質かというと、
おそらく日本のコンシューマーやユーザーが
暖簾~製造元~の保証を
求めているということです。
エンドースメントと我々は言うのですが、
やはり製造元の保証、
暖簾の保証というのを
常に求めているので、
むしろそれに企業が
対応していると言えます。


■日本型ブランディング
日本は商品を購入する際に、
パッケージの裏を見て、
どこが作っているかというのを見る率が
世界で1番高いと言われています。
日本は、製造元の素性、
暖簾の保証というのを求めています。
これはなかなか日本に特有な現象で、
いろんな意味で、日本型のブランディングの
特色となっています。


例えば、広告表現などに最も色濃く表れますが、
日本のブランディングというのは、
要するにコーポレートを
背負ってしまいます。
コーポレートというのは
大体長い伝統・歴史を背負っているので、
コーポレートと商品が一体化していると、
商品独自の思い切った先鋭的な
広告表現を展開できなくなります。
欧米の広告祭で、
日本の広告作品は間接的で、まどろっこしくて、
何を言っているかがクリアじゃない
という批判をよく聞きます。
欧米のマーケター達、あるいはクリエーター達は、
コーポレートを背負う日本のクリエーター達の
苦しみが分からないのだと思います。


コーポレート・ブランドを
背負うことのプラスの面を言うと、
コミュニケーションの安定性、
効率性があげられます。
そのコーポレートが有力である限り、
とても安定した効率的な
マーケティングの手法であるとも言えます。
例えば、ビュイックとかキャデラックは、
ジェネラルモーターというコーポレートに
依存していない訳ですから、
独自にイメージを作らなくてはなりません。
でも日本型の場合は、
コーポレートにある程度依存できるので、
効率的で安定した、ブランド形成が出来ます。
その代わりに、そのブランド独自の
際立った特色というのは打ち出せません。


欧米では、商品ブランドまるごとの
M&Aがよくあります。
例えばジャガーは、
今フォードが所有しています。
でも、フォードが例えば
フォードジャガーと名打って販売していたら、
とてもM&Aの対象にはなりえないでしょう。

例えばトヨタカローラは
いくらカローラが有名でも、
トヨタとリンクしているだけに
M&Aなどということは考えることもできないでしょう。


そういう意味で言うと、
トヨタは日本でトヨタ・セルシオという
車を作っていて、
欧米に出すときにレクサスという
ブランドで販売したのは、
トヨタのイメージが
かぶらない世界にしたい、
トヨタと言うブランドと切り離すという
高度の判断があったと思います。


私は、アングロサクソン型と
日本型のどちらのブランディングが
よいということを
言っているわけではなくて、
それぞれユニークな、
ちょっと違ったブランディング
の仕方をしていて、
それぞれ特質があるのです。
日本の場合はコーポレートに
かぶさっているので、
つい最近のY乳業の一件もそうですが、
ブランドがコーポレートと命運を
共にしてしまうというようなことが
ままおこります。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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