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村藤功教授一覧

特殊法人独立行政法人改革 (財務戦略/村藤先生)

07/07/20

これまでのお話の中で、
何とか法人とか、
何とか機構という言葉が
たくさん出てきました。
今回は、その実態について、
一体何をやっているのかということを
詳しくお話したいと思います。
まずは「特殊法人」について、
これはいったいどのようなものでしょうか。


■「特殊法人」とはなにか
国が何らかの行政業務を執行する場合に、
政府本体とは分けて、
法人を別に設立することがあります。
その設立に当たって、
特別に「根拠法」というものを作って、
その法律に則って業務を執行する場合、
その法人を「特殊法人」といいます。


例えば、民営化される前の
「電電公社」、「国鉄」、「専売公社」など、
「三公社五現業」などと言っていましたが、
これらは特殊法人だったわけです。
最近でも問題になった
「道路公団」や「住宅公庫」も特殊法人です。
特殊法人の業務については、
民間でも出来る現業を、
なぜ政府セクターがやらなければ
ならないのかということが、
ずっと問題になってきました。
そこで特殊法人はやめた方がいい
という話になって、
「独立行政法人」へと
変わっていっているわけです。


■「特殊法人」から「独立行政法人」へ
独立行政法人が特殊法人と比べて
大きく違うのは、
民間並みの財務諸表を
作らなければならなかったり、
外部監査を受けなければ
ならなかったりと、
透明性を高めた点です。
また、補助金の使い道が
基本的に独立行政法人に任されるなど、
特殊法人よりも
割と自由に経営していいという意味では、
民間企業にちょっと近くした
というような感じです。
政府にとっては、
特殊法人に対する批判が多かったために、
特殊法人を続々と
独立行政法人に変え始めた
という側面があります。
ところが、独立行政法人に変えても
いろんな事件が起こっています。


例えば、松岡農林大臣の自殺騒ぎや
官製談合騒ぎで問題になった
「緑資源機構」も独立行政法人です。
それから、先週も少しお話ししましたが、
昔「住宅公団」だった
「都市再生機構」も独立行政法人です。
そうかと思えば、
何か問題があっても
おかしくないのではないかと
国民が思うような、
国立博物館を持っている
「国立文化財機構」や、
サッカーくじをやっている
「日本スポーツ振興センター」も
独立行政法人です。
他にも本当にたくさんあります。


■独立行政法人化して何が起こるのか
実際に特殊法人から
独立行政法人に移行していくと、
どんな効果があるのでしょうか。
外部から見ると、
独立行政法人への移行というのは、
その後の民営化のための
途中のステップであるべきだ
というふうに思うわけです。
しかし、内部の人々にとっては、
ここでおしまいであって、
その先は考えたくないようです。
独立行政法人になったことで、
これから粛々と
行政事務を続けていきたいと考えており、
なかなか民営化の次のステップには
進みたがらないのです。


また、特殊法人から
独立行政法人に移行する過程で、
独立行政法人のほうが
透明な会計をしなければなりませんから、
突如として今までの損失が
透明に見えてしまう
ということが起こっています。
損失が見えてしまった段階で、
これは政府が投資して
やっている事業ですから
政府の投資金額が減少する形で
政府が損を負担します。
しかしながら、
もともとの政府出資が
税金や財政投融資によるもので、
財政投融資は返済が必要ですから、
投資の減少という損失は
税金で負担することになります。


本当は損していたのだということを
教えてもらわないと、
国民としては納得がいかないのですが、
出来るだけその話がばれないように、
静かに損を負担するということで、
粛々と損が暴露され始めています。
知らない間に
特殊法人から独立法人に変わっていき、
政府投資が減少する形で
損失が実現しているのは、
国民が知らない間に
過去の損失を
誰も責任を足らない形で
うやむやにしようという動きとも思われます。


■密かに穴埋めされている特殊法人の損失
こういう状況については、
みんななかなか気が付かないものです。
マスコミでも、
独立行政法人に移行したときに
何兆円の損をしましたというような話を、
2、3行くらいの
小さな新聞記事でしか取り上げません。
新聞には出るので、
どこにも全然情報が出ていない
というわけではないのですが、
問題意識がある人しか
気がつかないという状況のもとで、
すごい勢いで特殊法人が独立行政法人に
移行していっているわけです。


例えば、「雇用能力開発機構」や
「宇宙開発事業団」などの
54の特殊法人が、
49の独立行政法人へと
2003年度以降移っていきました。
これもすごい数ではありますが、
この段階で12兆円の繰越欠損金を
政府出資で穴埋めしていたことが
発覚したというような記事が
先日出ました。
これは帳簿上の金額なので、
時価で言うと
本当はもっと大変な額になるはずです。
時価の損失は官庁としては言いたくありませんし、
誰かが計算しているのかということすら
定かではありません。
時価評価は主観が入ってくるので
普通はマスコミに出てくることもありません。
本当はどれだけの損失が出ているのか
誰にもわからない状況で、
粛々と特殊法人の独立行政法人化が
行なわれているわけです。


■独立行政法人の合理化
そもそも、なんで
このような移行をしなければいけないか
という理由の一つは、
郵政公社を民営化すると
財政投融資のお金の入り口が無くなってしまうからです。
今後お金が入ってこなくなるとすれば、
お金の出口として、郵貯、簡保、年金などの資金を
勝手に使って維持している特殊法人や独立行政法人を、
これ以上維持できなくなります。
そのために小さくしなければならないわけです。
そもそも経営すら成り立っていないところも多いので、
何とかしなければいけないということで、
独立行政法人を合理化するための
「骨太方針2007」というものが発表されました。
それによって、
独立行政法人を業務縮小しようとか、
廃止したり民営化したりしようというような話が
いま出てきています。


その結果、
「行政減量・効率化有識者会議」というのが出来まして、
8月の初めまでに
独立行政法人の整理合理化を進めるための
基本方針を作ることになりました。
これには、渡辺喜美行革大臣、
渡辺ミッチーの息子さんで、
公務員改革法案で頑張った方ですが、
あの方が頑張っています。
ただ、あの方が頑張ると、
自民党の他の方々が反発するようで、
公務員改革法案も本当に通るのだろうかと
心配になりましたが、
やっと通ったという気配です。
それで、次はどこへ行くのかなと思ったら、
とりあえず独立行政法人の合理化で頑張る
という話になってきたということです。


■独立行政法人の今後
かつては三公社五現業なんて言われたうち、
三公社である「電信電話公社」、「国鉄」、「専売公社」は、
気がつけば「NTT」、「JR」、「JT」と、
みんな民間企業になってしまいました。
これをみても分かるとおり、
これらの現業は結局
民間企業でも出来たわけです。
政府が今現在単体や、
独立行政法人によって行なっている現業も
実はほとんど全部民間企業で
出来るものなのです。
そうであれば全てを民間企業に移すべきです。


財務経営には、
「企画して」、
「業務(現業)を行い」、
「進捗管理する」という
PDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action)の
流れがあります。
その中で政府は
「企画」と「進捗管理」だけを
固有の業務として
担当すればよいわけですから、
「現業」は全部民間に移しなさい
という動きが
これから起こってくるはずです。
そういう意味では、
特殊法人と呼ぼうが、
独立行政法人と呼ぼうが、
そこで止まるのではなく、
現業をやっているのであれば、
それを民間に移す選択肢を
これから考えていかなければいけない
ということだと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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