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山笠のビジネススクール的考察(1)(国際企業法務/岡田)

07/07/04

今日は、「山笠のビジネススクール的考察」について
お話します。


私は、生粋の博多っ子でして、
生まれが川端の川沿いで、
誕生日が7月28日で、
初めて自分が出た山笠は、
まだ0歳の時、
父親に肩車されてでした。
云わば、山笠をゆりかごに、育ちました。


その後福岡を離れてしばらく
山笠への参加はなかったのですが、
福岡に戻ってきて、
また参加するようになりました。
今は、恵比寿流れの綱場町から
出させていただいています。


■山笠と組織経営管理
山笠をかいていると、
みんなの力が山に結集したときに、
1トンある山がトントン、トントン、
と進んでいきます。
山笠をかきながら、
こうやって一つの組織体として
山笠を動かしているのって、
何かに似ているなと時々思うことが
あります。
そうです、組織経営管理に似ているんです。
会社法や、
企業の企業論の中で出てくるところの、
コーポレート・ガバナンス、即ち、企業統治や、
コンプライアンス(法令遵守・倫理遵守)
、マネジメント、経営管理など、
ビジネススクールで
やるようなところです。
今日は、それらが、どのように
山笠の中で、機能しているかについて
そのカテゴリー毎に
山笠を分解していきたいと思います。
タイムリーですし。

■山笠のガバナンス
まず、ガバナンス、
いわゆる統治です。
例えば山笠というのは、
ああ見えて、他のお祭りに比べて、
本当に事故が本当に少ないです。
それは何故かというと、
やはり一つには
ガバナンスが非常に
効いているからだといえます。
通常、ガバナンスに必要なのは、
ミッション、社是、社訓などで、
いわゆる企業体、
組織体のミッションを、
それぞれの組織の構成員が
きちんと把握していることが
基本になります。


例えば山笠の場合は、
神様に山笠を
奉納するというのが、
ミッションだと思います。
そのミッションを皆認識しながら
山笠をかくというのが、
山の大きなガバナンスというか、
そのミッションのベースだと思います。
そのミッションを
それぞれ全員が自覚しているというのが、
山笠のガバナンスが保たれている
大きな理由の一つなのだと思います。


■山笠のヒエラルキー
ガバナンスのもう一つの特徴である、
組織的な統制というのが
やはり必要だと思います。
山は取締がいて、
赤手拭いがいて、
取締の他にも総代など、
そういう幹部クラスがいて、
その下に平民がいるわけですけども、
このヒエラルキーが
非常によく保たれて機能していると言えます。


よく見ると、ヒエラルキーというのは、
各流れではなくて、
流れを構成している各町内毎なのです。
流れというのは、
20から30位の町の集まりです。
例えば町が違うと、
同じ流れでも
挨拶程度の関係です。
もちろん、流れをして、
さまざまな打ち合わせや
話し合いなどは、行われますが。


例えば、うちの恵比寿流れでは、
はっぴの模様が町毎に違います。
そのため、
模様の種類の数の町々の集合体で
流れを構成しているというのが
よく分かります。


例えばはっぴを統一している東流れ、
千代、中洲などは
皆同じはっぴなんですが、
それらの流れも、
さまざまな町が
集まっています。


その町毎に、
さっき言った
小さいピラミッド組織があって、
そのピラミッドの集合体で、
流れを構成しています。
町のピラミッドが
寄せ集まってやっているので、
非常にコミュニケーションを
密に取っておかないと、
なかなか流れの運営が難しいと思います。


町が違っても顔見知りなのは、
赤手拭いや幹部の連中くらいです。
しかもその赤手拭いは、
どれだけ町、あるいは流れに貢献したか
ということによって選出されます。
赤手拭いというのは
本当に面倒見のいい中間管理職で、
山笠の幹部になる人たちです。
そういう組織体が
きちんと機能しているというのが
ガバナンスの
保たれている原因だと思います。


■山笠のコンプライアンス
次は
コンプライアンス、
いわゆる、法令遵守です。
ガバナンスの一つの基礎をなす
コンプライアンスですが、
これについても、
山笠の場合は、
伝統に基づく
色々なルールがあります。
それぞれの流れや町内の中で
それらのルールを徹底し、遵守して、
ルール伝達のコミュニケーション・
ルートがきちん整備されています。
例えば、かけ声についても、
今年は「おいっさ」で行くのか、
「おっしょい」でいくのか、
お達しが来ます。


山笠独特のルールの一つに、
詰め所には
「不浄の者立ち入るべからず」
という看板があり、
女性は入ってはいけないという
760年の伝統に基づくルールがあったのですが、
これは3-4年前に見事崩されました。


このルール自体は、一見、男女差別の
時代錯誤も甚だしいものに思われます。
しかし、
山笠に出ている連中は、
朝山など朝早いときは、
ごりょんさんが
朝起こしてくれないと行けません。
また、締め込みにしても、
洗ってくれるのは
ごりょんさんですし、
そういう女性の助けがないと、
絶対に自分は出られないと
分かっています。
だから、「不浄の者立ち入るべからず」
という看板を出していても、
女性に対しての敬意、
尊敬および感謝の念はみんな持っていて、
それがあろうがなかろうが、
関係ないというのが
山笠に出ている男たちの
気持ちだったんですけど、
世間的な問題があったので、
終止符を打たざるをえかったのです。

分野: 岡田昌治准教授 |スピーカー:

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