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谷川徹教授一覧

地域クラスターと国際性(地域経済政策/谷川)

07/06/20

前回、クラスターを形成させ、
成長させるには、
人材が大変重要だということを
お話しました。
今回はその人材の中身について
お話ししたいと思います。
すなわち、日本人、福岡の人材だけで
福岡をどうにかするということではなく、
世界中の優秀な人達に
福岡に来てもらい、
その人達の力を借り、
その人達とコラボレーションし、
お互いに刺激を受けながら
地域を発展させて行くというのが
大事だという事を
お話ししたいと思います。


■福岡の国際化
福岡は、日本の中では
相対的に国際化が
進んでいる方ではないかと思います。


国際化を計る尺度はいろいろありますが、
例えば住民の国籍を見てみますと、
福岡に住む日本国籍以外の人の割合は、
他の県に比べて
相対的に高いと言われています。


特別在留許可を受けている方、
戦争前から日本に住まわれている方を
除かなくてはいけませんので、
厳密な数字を出すのは
難しいのですが、
他の地域に比べ、アジアの方を中心に
外国籍の方が多いのは間違いありません。


■シリコンバレーにおける移民の状況と活躍、効用
一方、世界経済のエンジン、
アメリカ経済のエンジン
といわれているシリコンバレー地域では
アメリカで生まれた人でない人、
すなわち新しい移民の比率は
38%に上っています。

また、人種構成を見てみますと、
白人の比率は40%程度しかありません。
一方アジア人が30数%です。
中南米系の人達は20数%で、
また黒人は3%しかいません。
ですから、比較的新しくアメリカに来た
アジア人や中南米系の方達のほうが、
存在感があるという地域なのです。

シリコンバレーというのは
世界の中で最も
市場経済が発達している
地域と言われています。
つまり、実力主義の場所です。
移民であろうと、
女性であろうと、
若い人であろうと、
老人であろうと、
実力さえあれば、
活躍できるという場所です。
そういうことが世界中に知られていますから、
世界中から、知恵のある方、
優秀な方がどんどんこの地域に集まって来ます。

シリコンバレーにはアジア系が30数%と
多く住んでいると言いましたが、
これはシリコンバレーが
太平洋に面していてアジアに近く、
アジアの優秀な人達が特に多く、
ここに集まっているということです。
シリコンバレーで
ベンチャーを起こしている人達の内、
アジア系の人達が起こしたベンチャーが
どれくらいあるかと言いますと、
1/3を越えて4割位じゃないかと言われています。
ですから、アメリカのハイテク産業、
強いアメリカは、
アジア人が作っていると言っても
間違いないと思います。

■シリコンバレーにおける日本人の存在感の薄さ
ただ、残念なのは、
シリコンバレーで日本人の存在感が薄いことです。
先程アジア系が30数%と言いましたが、
トップが中国系です。
2番目が、ベトナム系です。
3番目がフィリピン系です。
4番目がインド系です。
その中でも特にハイテク関係の
仕事に就いている人が多いのは、
中国系とインド系です。
日本人は
7番目か8番目くらいです。
ほとんど存在感がないのです。


なぜそのようになってしまったかというと、
スタンフォード大学の先生はこう言っています。


スタンフォード大学で優秀な人種は、
中国系、インド系、韓国系、台湾系、日本系などアジア系です。
ただ日本人と韓国人は、
優秀な成績を修めた後、
多くの場合母国に帰ってしまいます。
それは母国に帰った方が大企業に入り、
安定した生活を送れると
思っているからだそうです。
しかし、中国系やインド系は、
国に帰っても、
お金を十分稼げるかどうか
分からないので、
アメリカで就職します。
そしてアメリカで良いネットワークを築き、
様々な経験をして実力をつけ、
アメリカで成功するか、
その技能を持って母国に帰って
大成功するというと言うのです。


日本の場合は、
世界第2の大国といわれていますが、
逆に大国であるために、
アメリカで
より良い技術やより良いマネジメント法を学んだり
することに関心が低いのです。
また他の国の人達に
ネットワークを広げたりするという
そういったことをしないで帰ってしまいます。
そのような状況が
大きなハンディになっていると私は思います。


■福岡における地域の国際化の努力
シリコンバレーの例で申し上げましたように、
シリコンバレーが活性化しているのは、
高度人材、すなわち、
知的レベルの高い人達が沢山
世界中から来ているということが
要因です。


学歴などで外国人の受け入れを制約するというのは
どうかという考え方もありますが、
基本的にはやはり、優秀な留学生に、
特にアジアからの留学生に、
もっと福岡に来てもらいたいと
強く願っています。


留学生の方だけに来ていただくというのは
ある意味では虫のいい話です。
ワーカークラスの方も含めて、
もっと受け入れるべきではないかという
議論があります。
そのような問題と、
どのように折り合いを着けていくのか、
もっと移民に対して間口を
広げるべきではないかという議論と、
外国人の中で本当に来てほしい人だけを
呼ぶという政策との整合性を
どうとるのかということを、
これから住民が、
議論していかなくてはいけないと思っています。


また日本に来た外国人に
単に、日本の文化を教えるということだけではなく、
出来るだけ海外の方、移民の方と接触し、
コミュニケーションをとることによって、
自分達の気持ちも、
国際標準に合わせていくという、
そういった心の国際化みたいなものが、
私は福岡の住民には必要だと思っています。

分野: 谷川徹教授 |スピーカー:

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