QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

高田仁准教授一覧

産学連携から見るタミフル問題(前半) (産学連携/高田)

07/04/30

暖かくなってようやく
小康状態となったインフルエンザですが、
今年は抗インフルエンザ薬の
タミフルが大いに話題になりました。
最初は特効薬として名を馳せていましたが、
子供の異常行動などが報告されるようになって、
結果的に10代への使用が原則禁止となりました。


また、その決定の過程で、
タミフルの副作用に関する
厚生労働省の研究班のメンバーである
大学教授らが、製造販売元の製薬企業から
寄附金を得ていたことが明らかとなり、
結果的にこの大学教授らは
研究班から外れることとなりました。
今日と明日は、こうした過程で
起こった問題点を振り返ってみようと思います。


■マスコミ等の論調
マスコミ等での報道を見る限り
今回の問題は、


①国はなぜ副作用情報を
もっと早く開示し、使用禁止等の
ガイドライン対応を迅速に出来なかったのか
(=厚生労働省の対応に対する批判)


②厚労省の研究班のメンバーに、
製薬企業から寄附を受けた大学教授らが
含まれていたのは妥当であったか
(=厚労省の研究班としての判断に、
ある種の“手心”が加えられたのではないか、
という疑念を招いた)


という2点にあります。
1点目については諸説あると思いますが、
基本的には、より早い対応が求められることに
疑問の余地はありません。
今日は特に2点目について、
“産学連携における利益相反問題“
という観点からお話したいと思います。


■“利益相反”とは
まず、大学教授(研究者)が
製薬企業から委託あるいは
寄附を受けて研究を行うことは、
極めて一般的な産学連携の姿です。
ただここでは、
“利益相反(りえきそうはん)”という観点から
適正なマネジメントが求められます。


“利益相反”とは、
今回のタミフルのケースでいうと、
研究班のメンバーだった大学教授が、
“厚労省の研究班メンバーである”という立場と、
“製薬企業から寄附を受け
研究を行っていた大学の教授である”
という2つの立場があり、
この2つの立場での
利害が相反する状態を指します。


これによって
“客観的な判断が求められる
国の研究班のメンバーにも関わらず、
製薬企業から資金提供を受けていたことから、
研究班としての判断に
手心が加えられたのではないか?”
という社会的疑念を招いたという
問題が生じました。


■利益相反に陥りやすい状況
産学連携を進める過程では、
往々にしてこの“利益相反“状態に
陥りやすいのです。
わかりやすい例を挙げると、
大学のある教授が企業と共同研究を行うとき、
大学の教授という立場では
”真理の探究“が求められるので、
常に客観的なデータに基づいて
結論を述べる必要があります。


一方で、その研究を行うために
企業から巨額の資金提供を受けていたとすると、
(あってはならないことですが)
企業に有利なように実験データを
解釈してしまうこともあるかもしれない、
といったことが挙げられます。


■アメリカでの事例
米国では、ゲルシンガー事件という
有名な事件がありました。
これは、ペンシルベニア大学で
行われていた遺伝子治療法の開発の過程で、
ゲルシンガー君という治療を受けた
患者さんが不幸にして亡くなったのですが、
治療に関わっていた医師が
遺伝子治療の薬剤を開発していた
ベンチャー企業のストックオプションを
保有していたことがわかり、
“個人の金銭的利益のために
人体実験をおこなったのか!”
という大きな批判を招きました。


それ以来、
ペンシルベニア大学では、
医薬品を開発するベンチャーの
ストックオプションなどを保有している研究者は、
そのベンチャーの開発品に関する
臨床治験に参加してはいけない、
というルールを制定するに至りました。


では、今回のタミフルの件では
利益相反状態をどのように
マネジメントしなければならないのでしょうか、
また、その背景には
どのような問題があるのかについて、
明日、続きをお話ししたいと思います。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP