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日興の粉飾とシティのTOB (財務/村藤)

07/04/13

今回は、日興コーディアルグループの粉飾と
シティグループのTOB(株式公開買い付け)についてお話します。


■日興證券の粉飾決算
振り返ると、日興証券が
粉飾決算をしたことが発端ですね。
日興証券がこれをもみ消そうと動いたために、
証券取引等監視委員会を怒らせ
金融庁が日興コーディアルに
5億円の課徴金を払わせることになり、
その結果、金子会長と有村社長が辞任に追い込まれる
という出来事が、去年の年末に起こりました。


その時、東京証券取引所(以下、東証)は
日興コーディアルの有価証券報告書を信じて
株を取引している人達は大丈夫なのかと
この株は東京証券取引所から外すことを
検討した方がいいのではないかという事で
監理ポストに移しました。
これは、上場廃止の可能性があるとして
投資家に注意を喚起するものですが、
当初は上場廃止に間違いないと
日経新聞など各メディアがそのことを報じました。


ところそれがひっくり返ったわけです。
しばらく経ってやはり上場は維持すると東証は決定しました。
なぜ上場廃止を躊躇したのか、
その辺りが不透明でいろいろな推測があるようですね。


■東証による上場維持決定の背景
東証が公表しているところでは
西武、カネボウ、ライブドアなど
昔東証が上場を廃止した例と比べると、
「不正の影響が重大な場合」には
あてはまらないと判断したようです。


西武では、堤氏が
西武鉄道の株主だったことを40年間隠し、
カネボウでは、債務超過を隠し、
ライブドアでは、トップのホリエモンが逮捕されるなど
過去に上場廃止になった例に比べれば、
今回の重大性はそれほど大きくない、
少し罪は軽いのではないか、そう判断されたわけです。


また、今回の場合、2年間で
400億円程度を粉飾決算していたのですが、
日興コーディアルの経常利益は約2000億円。
400億円というのは2000億円に対して
1/5程度とさほど大きくもない。
加えて、本当に組織的、意図的に行われたという
決定的な証拠がある訳でもないため
「ブラックではなくグレー」と
見なしたと東証は言っています。


■シティグループのTOB
一方、日興コーディアルの株が
上場廃止になりそうだと皆が思っていた頃、
シティグループ(以下シティ)という
世界でトップを争う大銀行グループが、
TOBによる日興コーディアルの完全子会社を
めざすと発表しました。


日興コーディアルの株主には
日本の「みずほコーポレート銀行」もありますが、
元々、シティは日興コーディアルの最大の株主で提携先でした。
そして、もし上場廃止されるなら、一株あたり1350円くらいで
買えるだろうというのがシティの読みだったのですが、
東証が上場廃止でなく、上場維持だと
突然公表したものですから、シティも驚きますよね。


上場廃止が無いのであれば、
一株1350円では誰も売ってくれそうにない。
だから買い取り価格を1700円に引き上げました。
一株1700円であれば
それなりにプレミアが付くことになるので
株主がそれなりに応じて売ってくれるのではないかということです。


■日興コーディアルの株価の動き 
上場維持の決定後、
日興コーディアルの株価は上がっていますね。
これは、TOBをかけると、
マーケットで買いTOBに応ずれば、
その値段で売れますからね。
株価は幾ら下がっていても
TOB価格に段々近づいていくのは当たり前といえます。
今回の場合も、株価上昇は当たり前といえます。
しかし、今株を買っている人たちが
実際にTOB価格の1700円で売るかどうかは、
これからの見所ですね。おそらく、
1700円で売る人と売らない人がいますから。


TOBでは、株式50%以上買えば成功となりますが、
シティは100%買いたいと言っています。
しかし100%買い取れるとは到底思えません。


当初、日興コーディアルの株を
4.8%所有していたみずほが応じるか、
これが最初の問題でした。
シティに対抗してTOBを行うか、
株を持ち続ける可能性もあると考えられていましたが、
シティのTOBを支援し、4.8%の株を売ることにしたそうです。
みずほとしてはシティとの関係を重視したという事になります。


株式を50%集めない限りTOBは失敗です。
外資系のファンドは、前の値段(1350円)では
絶対に売らないと言っていましたが、
1700円に上がり、今度は売る可能性もそれなりにあります。
ただ売る可能性と同時に、売らない可能性もあります。
また、他の所が出てきてTOBをかけてくる
可能性も消えた訳ではありません。


■昔の四大証券の現状
では、日興コーディアルが完全に
シティグループの傘下におさまるとどうなるでしょうか。
かつての四大証券のうち、山一証券が破綻し、
今回日興コーディアルがシティの傘下に入れば、
純粋な日本の証券会社は、野村と大和しか残りません。


銀行も、昔は沢山ありましたが、
気がついたらもう三つしか無く、
監査法人も気がつけばもう三つしかありません。
いろいろなものが減り、きちんとサービスを受けられるのかと
段々心配になってきます。


元々日興は三菱グループだったので
東京三菱が持っているべきところが、
東京三菱がグループ内維持に失敗し、
みずほがつばをつけようとしたが果たせず、
今回シティの支配下に落ちてしまいそうな気配です。


純粋な日本の企業が少なくなり、
我々はちゃんとしたサービスを将来
受けられるのかどうか、これが一番心配です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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