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ビジネス・スクールとは(2) (ビジネス教育/星野)

07/04/03

今回は前回に引き続き、
ビジネス・スクールとはどのようなものか
についてのお話です。


■高度ビジネス教育の歴史
世界最初の
ビジネス・スクールは、1881年に設立された
ペンシルバニア大学のウォートンスクールであり、
その歴史は120年以上になります。
アメリカでは現在500を越える
MBAプログラムがあるといわれており、
毎年9万人を越えるMBAが養成されています。


日本でビジネス・スクールというのは、
高度専門職職業人養成という、
いわゆるビジネス・プロフェッショナルを
養成する大学院になります。
ここで2年間の所定の単位を修得することで、
MBAという資格を得られます。


日本では
専門職大学院という制度ができる
遥か前の1970年代から、
国内で初めて設立された
慶應義塾大学の慶應ビジネス・スクールが
MBA教育を行ってきました。
ところが国内でのビジネス教育が本格化したのは、
まだここのところ10数年といったところだと思います。


今までの日本企業は、
大学を卒業したばかりのまっさらな人材を採用して、
企業の色に教育するというのが一般的であり、
アメリカのようにMBAを持つ優秀な人材を
ヘッドハンティングして、自社の経営を任せるといった
システムが馴染まなかったからといえます。


■変わりつつある日本企業の意識
これまで多くの日本人が
MBAを取得するためアメリカやヨーロッパの
ビジネス・スクールに留学しています。
今まではそのような人たちの多くは
外資系の企業に就職するというのが一般的でしたが、
最近では日本の企業の中でもMBAの必要性ということが、
少しづつ認識されるようになってきているようです。


グローバルにビジネスを展開すると、
自分達の契約や交渉の相手というのは
MBAを持っている外国人になるかもしれません。
このように、ビジネスが高度化していけばいくほど、
日本的な社内研修での人材の育成では不十分となり、
MBAの必要性に目を向け始めているようです。
そのため、一部の日本企業でも
MBAを持っている人を採用するという傾向が
でてきていると思います。


さらに、最近では終身雇用制度が崩れ、
仕事の流動性が出てきたことで、
より資質の高い人を中途採用の即戦力として
活用するという傾向が出てきています。
そのような中でMBAというものが大きな資格であり、
武器となるのではないかと思うわけです。
特に他の大企業で活躍する人材を引っ張ってくるという、
いわゆるヘッドハンティングという行為も行われています。
ヘッドハンティングに当たり、
その人がどれだけのスキルや知識を
持っているかという判定を行う際に、
MBAの基本的な教育を受けているというのは安心感にもなり、
一つの目安にもなるといえるでしょう。


■日米におけるビジネス・スクール観の違い
上記のような変化は見られますが、
日本においてビジネス・スクールは、
アメリカのように一般的といえるところまでには浸透していません。
日本から企業派遣で
ビジネス・スクールに行った方が、
企業の中で必ずしも能力が活かされるような部門に
配属されないという話もありますし、
MBAとしてのそれなりの待遇で
採用するという事もなかなか見られません。


一方のアメリカでは、
ビジネス・スクールに通うことは
自分への投資と考えられています。
投資するというのはお金もそうですし、
時間というのも含まれます。
ビジネス・ウイークの昨年10月の調査によれば、
ハーバード大学の年間の学費は46,000ドル、
つまり2年間で92,000ドルですから、
学費だけで1100万円近くにもなります。
これに生活費などを加えると2000万円近くにもなり、
MBAを取ってその分を回収しないといけないわけです。


例えばMBAを取得後の初年度の年収は、
ハーバード大学修了の平均で105,000ドル、
スタンフォード大学で110,000ドル、約1300万円にもなります。
つまり就職後2から3年の年収で
学費の分を回収するということになります。
このように、自分に投資するのが
アメリカのビジネス・スクールだとすると、
日本では自分の知識を高めるといったレベルに
留まっているというのが、大きな違いではないかと思います。


■日本のビジネス・スクールの未来
これまでの日本では、
ビジネス・スクールというもの市場が
需要と供給の両面において成立していませんでした。
この背景には人材は企業の中で育てるというのが
最も大事というように考えられてきたという発想があるでしょう。


そのため、日本には先程お話しした慶應ビジネス・スクールや
新潟の国際大学といったビジネス・スクールが
かなり早い時期からありましたけれど、
数も少なく卒業生から日本の企業の中で
なかなか活躍する人が出てこないという状況でした。
しかし平成元年に一橋大学と神戸大学が
ビジネス・スクールを設立し、
最近では多くの大学がビジネス・スクールを作りました。
それはそれだけの需要と供給が出てきたという
大きな変化ではないかと思います。


今後のビジネス・スクールに
求められることは、MBAを取った人が
いかに企業に貢献できるのか、社会を変えることができるのか
という実績を示すことだと思います。


私たち九州大学ビジネス・スクールが重要だと思うことはそこです。
つまり卒業生がどのような結果を残したのか。
あるいは、九州大学ビジネス・スクールの出身者の仕事ぶりが、
周囲に認められるということが、重要だと思います。
そのことが日本において、より広く
MBAが認識されるきっかけになるのであろうと思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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