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新日鉄とウジミナス(財務/村藤)

06/12/15

今回は新日鉄とウジミナスの話をしたいと思います。


■ 新日鉄、ウジミナスへ直接出資

ウジミナスというのはブラジル最大手の鉄鋼会社です。
もともとは日本とブラジルの合弁会社として
1958年に設立され、1962年に創業を開始しました。
新日鉄は日本側の投資窓口会社である
「日本ウジミナス」を通して
ウジミナスに19.4%出資していますが、
日本ウジミナスは新日鉄だけではなく、
国際協力銀行や石川島播磨などと共同で作ったものです。
ところが今回、新日鉄は、日本ウジミナス経由ではなく、
ウジミナスに直接1.7%出資することを表明しました。


■ 出資強化の背景

直接出資の動機は、
ウジミナスがブラジルで計画している
高炉建設事業にあります。
新日鉄はこの事業に参加する予定です。


この背景には、鉄鋼業界の
世界的な再編というものがありますが、
とりわけ、ミタルという世界の鉄鋼最大手の動きが
大きかったものと考えられます。
ルクセンブルグに本社を持つ、
世界第二位のアルセロールという会社がありましたが、
先日ミタルがこのアルセロールを買収したのです。
アルセロールはこの買収を嫌悪し
一時は回避しようとしましたが、
結局は買収されてしまいました。
ミタルのアルセロール買収により、
新日鉄は世界三番手から二番手に浮上したわけですが、
高炉で作るクルードスチールという粗鋼生産量で、
なんと三倍以上の差がひらいてしまったのです。


7月、ミタルの会長と
新日鉄の三村社長が会す機会があったのですが、
その際ミタルの会長は
「あなたもどこか買ったらどうか」と発言し、
三村社長はこれに大変なショックを受けたといいます。
新日鉄に限らず、日本の多くの会社は、
技術提携や合弁会社に出資する
といったことはよく行うものの、
買収をするというようなことに対しては
あまり馴染みがありませんでした。


しかし、今やミタルが3倍以上の規模となってしまい、
危機感を持ち始めたのでしょう。
あるいは新日鉄も次なる買収の
ターゲットとなるやも知れません。
新日鉄は、敵対的買収に対する防衛や、
自動車メーカーへの高級品の供給拡大へ向け、
出資や買収を通じた
グローバル連合を作り始めたように見受けられます。


■ なぜブラジルの会社か?

今回、なぜブラジルの会社を選んだのかという点ですが、
それは既述のようにブラジルにおいて
ウジミナスが高炉を作ろうとしており、
それに便乗するという思惑があったからです。


鉄というのは当然鉄鉱石が原料となりますが、
実はブラジルは世界最大の鉄鉱石産地なのです。
また、鉄を作る際には石炭も必要となってきますが、
ブラジルにはその石炭も豊富にあります。
トヨタやホンダがブラジルに工場を置き、
自動車用の鋼材需要が急増しているということもあります。
ブラジルにウジミナスと合弁会社を設立し、
高炉を建設すれば、
その高炉で生産したクルードスチールを用いて
自動車用の鋼板を生産、
トヨタやホンダのブラジル工場に
供給することができるというわけです。
さらには、ブラジルを拠点に
高級鋼材需要が好調な北米や欧州にも輸出し、
国際競争力の強化につなげるという構想をも抱いています。


■ 激動の鉄鋼業界

昨今、鉄鋼業界は大変な変化を見せています。


新日鉄は昔から日本の鉄鋼業界の盟主であり、
世界でも一位、二位を争っていると
自負していたに違いありません。
しかし、日本ではかつてのNKKや川崎が合併、JFEとなり、
新日鉄とそれほど変わらない規模を誇るまでになっていますし、
既述のようにミタルは突然アルセロールを買収し、
とんでもない規模の企業になってしまいました。
新日鉄としては危機感を抱かずにはいられない状況なのです。


周囲を見てみると、韓国にPOSCO、
中国に宝山製鉄などといった大手企業があります。
POSCOに対しては以前から直接出資を行っていましたが、
世界的な動向を踏まえ資本提携を強化しています。
かつての新日鉄は、アジアにおいては
これらの企業と競争している状況だと考えていたと思われます。
しかし、今年10月、インドのタタ製鉄という企業が
世界8位のコーラスという企業を買収することで合意に至りました。
(ただし、これに対してはブラジルの第3位のCSNが対抗提案を行っています。)
また、ミタルはオランダに拠点を置く企業ではありますが、
経営はインド人によって行われています。
ごく周辺における鉄鋼業界の様相も随分様変わりしてきているのです。


アメリカにはUSスチールという
昔世界一の鉄鋼会社だった企業がありますが
(現在は世界第6位)
最近、このUSスチールも買収されるのではないか
という騒ぎが起こり始めています。
このように、今や鉄鋼業界は、
世界の大手が直接の買収や出資を使って
規模や覇権を争う時代に突入しています。
世界的な傾向としては、BRICsなどの
資源を持つ国の企業が力をつけてきている
と言うことができるでしょう。
こういった流れの中で、今後新日鉄がどう動き、
そして世界の鉄鋼業界がどう変わっていくのか、
非常に注目されるところです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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