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ハイテク製品の使いやすさとは (産学連携/高田)

06/12/14

技術は日々どんどん進歩していますが、
果たして身の回りのハイテク製品は
使いやすくなっているのでしょうか。
今回はこのことについて考えていきたいと思います。


■ 直感で操作できるゲーム機 ”Wii”

今、任天堂の新しいゲーム機”Wii”が
非常に注目を集めています。
これまでゲーム機は、
情報処理能力がどんどん向上することによって、
コントローラーのボタン数がどんどん増え、
操作が非常に複雑になっていました。
結果として、このことがゲーム離れを引き起こしていた
ということは否定出来ないと思います。


”Wii”では新しいスティック状の
コントローラーを使用するのですが、
それを動かしたりすることで
画面の中で野球をしたり、
オーケストラの指揮が出来たりします。
このように、直感で操作が可能なので、
コントローラーに不慣れな人にも
ゲームの楽しみを拡げました。


■ 我々はハイテクの製品を使いこなせているか?

今、任天堂のWiiはゲーム機の行き先に
新しい道を示しているのだというふうに思います。
振り返ってみれば、身の回りの色々なハイテク製品ですが、
果たして我々はうまく使いこなせているのでしょうか?
こういった疑問はみなさん
等しく持たれているのではないかと思います。

 
例えば携帯電話。個人的な話になりますが、
私の携帯電話には未だにカメラ一つ付いていません。
あるいはビデオデッキ。家でビデオ録画しようと思っても、
マニュアルを見ながらでないと
録画出来ないという情けない状況です。


■ 求められるのはユーザーインターフェースの向上

しかしその一方で、最近購入したiPod Shuffleは
簡単に使うことができたのです。
この小型の携帯音楽プレイヤーには、
通常イメージするような分厚い説明書は
梱包されていませんでした。
ぺらっとした紙をさっと眺めるだけで、
あとは直感だけで操作出来るのです。
また、このモーニングビジネススクールもそうですが、
ポッドキャスティングなんていうのは
非常に簡単に聞くことが出来ます。
これらに共通して言えることは、
ユーザーインターフェースが良いということです。


こういった状況を見ていると、
メーカーなどが先端の技術開発を行う際、
それを使いこなす為のユーザーインターフェースを
もっと向上さなければいけないのではないか
ということを強く感じます。


■ コンテナ操作のシミュレーション

一つ面白い話があります。
今年、イタリアのボローニャで
R2B(リサーチ トゥ ビジネス)という
大イベントが開催されました。
これは産学連携で大学や企業の
基礎研究所の技術を実用化に結びつけよう
ということで開かれた展示会です。


九大がブースを出していたその横に
フィンランドのある大学がブースを出していたのですが、
そこにはパソコンの画面と
ゲーム機のジョイスティックのようなものが置いてありました。
これ、何かというと、港湾地域で
コンテナの積み下ろし作業を行う作業員の訓練ための、
コンテナ操作のシミュレーションだったのです。
コンテナのクレーンの制御というのは
本物と全く同じように作られていて、
微妙な角度も、ジョイスティックの動かし方によって
事前に訓練出来るという優れものです。


逆に考えてみれば、そういった訓練を充分に行わずに
現場に送り込まれてしまうと、トラブルを起こす、
最悪の場合、重大な事故が起こってしまうかも知れないということで、
湾岸労働者の方々にとっては
たいへんなストレス要因だったに違いありません。
こういった問題を改善する為に、
フィンランドの大学の方々は
このシミュレーターを作ったというわけです。


■ 開発には心理学の専門家が関与

興味深いのは、この開発に携わった研究者が
もともとハイテクの分野ではなく、
心理学出身の研究者だということです。
ですから、人間が機械を目の前にして
どういう反応を起こすのか、
シミュレーションを通して
どういったことを向上させれば
安心して機械を取扱えるようになるのか、
などといったことが非常に良く配慮されているのです。


以前に少し紹介しましたが、九州大学にも
ユーザーサイエンス機構(USI)という組織があり、
ユーザーの目線から技術開発を行おう
というプロジェクトが進められています。
技術の進歩に伴って、人間が技術に使われるのではなく、
あくまでも人間のための技術だというスタンスがそこにはあります。


“Wii”やiPod Shuffle、そして今回ご紹介した
コンテナ操作のシミュレーションのように、
直感や感性という人間の能力を引き出して
豊かに生活出来るような、
そういう道具こそが先端技術の粋なのだ、
というメッセージを読み取れる製品が
さらに出てくることを期待したいですね。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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