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米国ノースカロライナ州リサーチ・トライアングルに見る地域産業の振興 (産学連携/高田)

06/11/23

■ 第二、第三のシリコンバレーを目指して

産学連携を活用し、
地域の産業を高度化しましょう
という取り組みは世界中に多く見られます。
簡単に言うと、皆、第二、第三の
シリコンバレーを創るべく頑張っているわけです。
シリコンバレーというと、
スタンフォード大学を中心にして、
たくさんのIT企業やバイオ企業などが
周りを取り囲んでいる、
非常に活力のある地域です。
しかしながら、このような
地域産業の高度化というものは、
そう簡単に実現するものではありません。
しかし、中には長い時間をかけて
地域産業の高度化に取り組んで
成功を収めた地域もあります。
その一つが、アメリカのリサーチ・トライアングルです。


■ ”リサーチ・トライアングル”という名前の由来

リサーチ・トライアングルは
米国東部のノースカロライナ州に位置しています。
なぜこのような地名がつけられているかということですが、
これは、地域を代表するノースカロライナ州立大学、
ノースカロライナ大学、デューク大学という
3つの大学に囲まれたトライアングル状の地域を、
世界的なハイテク拠点にするという
州の壮大な計画に因みます。
また、産・学・官という三者(トライアングル)の
連携を促進するという意味も込められています。


■ リサーチ・トライアングル・パークの開発

州の計画は1950年代に遡ります。
当時の州のGDPは、全米で
かろうじて最下位を免れていた程度で、
主な産業は綿花とタバコという第一次産業でした。
3つの大学の優秀な卒業生たちは、
地元に就職口がないため、
卒業するとこの地を出て行かざるを得ない状況でした。
このことに危機感を持った
当時の州知事がリーダーシップを発揮し、
“リサーチ・トライアングル・パーク”という
研究所団地の開発がスタートしました。
そのコンセプトは緑豊かな環境の中に
ゆったりと研究所が点在するというものでした。


1960年代半ば、IBMが
新しい基礎研究所を設置したことで
この地域の知名度が上がり、
その後続々と製薬企業や
エレクトロニクス企業などの研究所が進出、
徐々に地域のハイテク化が進んでいきました。
その結果、現在の集積企業は150社にのぼり、
50,000人以上の雇用が実現しています。


■ 企業がリサーチ・トライアングル・パークに進出を決めた理由

数多くの企業が
リサーチ・トライアングル・パークに
進出を決めた理由として、

① 3つの大学との近接性
② ゆとりある緑豊かな環境
③ 空港への近接性
④ 生活コストの低さ

等が挙げられます。中でも、大学との連携による
研究の活性化と優秀な人材の確保は
企業から見て大いに魅力的です。
このため、有名なビジネス誌で
「ビジネスに適した都市」
の上位にランクインすることもしばしばです。


■ 産学官による企業支援策

企業集積を円滑に進めるべく、
地域の産学官が連携して
様々な支援策を戦略的に提供しています。
例えば1980年代には
「バイオテクノロジー・センター」が設置され、
進出した製薬企業の研究所に対して
サービスを提供したり、
大学との連携を仲立ちしたりと、
地域のバイオ産業の振興に貢献しています。


90年代に入ると、
地域内でのベンチャー創出にも
力を入れるようになりました。
例えば、ベンチャーが
格安で入居出来る施設を設置し、
会社設立後間もない企業を
手取り足取りサポートすることによって
成功へと導くという支援を行っています。
産学官連携の国際会議に出席すると、
この地域の大学発バイオベンチャーを
育成したという報告を多く目にします。


シリコンバレーを
そっくりに真似ようとするプロジェクトは
世界中に数多いですが、
リサーチ・トライアングル・パークは
産学官が連携し地域産業の
ハイテク化に成功した好例と言えるでしょう。


来週月曜日には、星野先生から
この地域の大学のビジネススクールによる
教育の取り組みが紹介されることと思いますので、
関連づけてお聴き頂ければと思います。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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