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永池克明教授一覧

東アジアを脅かす少子高齢化の波 (アジアビジネス/永池)

06/11/01

今回は、少子高齢化が日本だけではなく
東アジア全体で急速に進んでいることに
関してのお話をしたいと思います。


■急激な減少をみせる出生率
近年、日本では出生率の低下が
深刻な問題として取り扱われています。
ところが、この少子化の問題は
日本のみならず東アジアの国々でも同様で、
特に日本に次いで経済発展を遂げた
アジアNIESと呼ばれる新興工業経済群、
すなわち韓国、台湾、香港、シンガポールの
4つの国と地域では日本以上のスピードで
少子高齢化社会へと移行し始めていることが注目されます。


一人の女性が一生に生む子どもの数を示す
人口統計上の指標を
合計特殊出生率(TFR)といいますが、
これが2.10であれば、
その国の人口に増減が生じないことを表しています。
現在の日本の数値は1.25まで下がっており、
それが非常に深刻な問題として
議論されているわけです。
ところが、他の東アジアの国々でも、
ベトナム、タイ、中国等が
この2.1という数値を下回っているのですが、
とりわけ、NIESの国々ではその減少ぶりが顕著です。
NIES各国は1970年代、
非常に高い出生率を誇っていました。
1971年の日本の出生率が2.16であったのに対し、
同時期の韓国は4.54、台湾は3.71と
およそ2倍となっています。
これは全世界の平均(70-75年で4.49)と近い水準です。
しかし、1980年以降は経済成長と共に
少子化が進んでいった日本の後を追うようにして、
NIES各国も出生率を低下させていきました。
2005年の数値を見ると、台湾が1.12、
韓国が1.08、香港にいたっては0.97と
5ヵ年連続で1.00を下回っています。


世界全体で見ても、
NIES各国は出生率の低さのランキングで
トップ10に入っています。
ちなみに、このランキングでは日本は15位と、
幸いなことにトップ10入りは免れています。


■経済の発展、変化が少子化を促す
NIES諸国、東アジア全般の少子化の原因としては、
経済成長による所得水準の上昇が挙げられます。
また、その背景にある女性の労働参加率の上昇や高学歴化、
さらには晩婚率や未婚率の上昇といったことがあります。
これらの問題は日本でもまったく同じですが、
NIES諸国ではこれらが日本よりも短期間に
起きていることが注目されます。


さらに各国での社会事情による要因もあります。
韓国では1997年に起きた経済金融危機以降に
多くの企業が大幅なリストラを行い失業者が増加したこと、
その一方で子供を進学塾に入れて
一流の大学に入れたいという風潮の高まりの中、
教育費用の負担が増加していることが、
一人の子供に十分な教育投資をしたい、
子供をあまり生みたくないという傾向になりつつあるようです。


そのような状況を解決するため、
韓国や香港の政府は
ベビーボーナスといった一時金の支給や、
保育所施設の充実など、
様々なインセンティブを導入しています。


■拡大する東アジアの高齢化社会
一方の高齢化に関してですが、
こちらも東アジア各国は
非常に厳しい状況におかれています。


一般に、65歳以上の老年人口が
全人口の7%を超えると「高齢化社会」、
14%を超えると「高齢社会」といわれるのですが、
2005年には台湾が9.7%、
2004年にシンガポールが8.0%で、
国連の推計では15年に13.3%に跳ね上がるとみています。
同様に、香港は14.4%、韓国が13.2%と
大幅な上昇が見込まれています。


また、今後注目されるのは
一人っ子政策を行なっている中国です。
中国の一人っ子政策は
1970年代から始まりましたが、
それが今後、ボディーブローのように
じわじわと効いてくるでしょう。
国連の推計では、2015年か2020年には
人口が減少に転じ、高齢者比率も
2010年には8.3%、2025年には13.7%と、
世界の中で最も高齢化が進む国と予想されています。


これらが良いことなのか悪いことなのか、
いずれにしてもこれからの経済や産業に
様々な影響を与えてくるものと思われます。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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