06/10/19
米国の有名な雑誌「ニューズウィーク(News Week)」が、
世界の大学研究力ランキングを発表しました。
今回はこのことについてお話ししていきたいと思います。
■ 大学ランキング
何を以って大学のランキングを行うのかということですが、
基本的には「研究力」を基準としており、
たとえば論文引用数の多い研究者数だとか、
「サイエンス」「ネイチャー」などの一流紙への
論文掲載数などがその指標に含まれています。
日本からは、東大16位、京大29位、大阪大57位
といった具合に、100位以内に5大学がランクインしており、
また、日本とオセアニアを除くアジアからは
5大学がランクインしています。
アジアにおいては近年、特に中国の大学が
急成長していると言われています。
ランキングはあくまでも1つの指標ですから、
それが大学の実態の全てを表すというわけではありません。
しかし、社会一般の目に触れて、
例えば受験生の大学選びに使用されることもあるので、
大学としても無視出来ないものとなっています。
■ 大学の国際化
ランキングもさることながら、
「ニューズウィーク」の記事では、世界の主要大学が
いかに国際化に熱心に取り組んでいるかが紹介されています。
そこには「現在の大学教育に最も大きな影響を与えているのは、
国境を越えた交流である」という考え方があります。
実際、国際化をどんどん進めることで、
多様な人種や宗教、考え方を持った人が集まり、
それらが刺激しあって新しいものを創造することができるのです。
事実、ランキングの高い大学というのは、
国際化に一生懸命取り組んでいます。
過去30年間、母国を離れる留学生の数は
年率3.9%でアップしており、
75年には80万人だったものが、
04年には250万人にまで増加しているそうです。
また、学生のみならず、教員に占める外国人比率というのも
増加傾向にあります。たとえばアメリカでは、
理工系教授の20%が外国出身だといいます。
また、エール大学やハーバード大学は、他大学に先駆けて、
全ての学生に少なくとも1度は留学や外国での
インターンシップの機会を与えて、
そのための資金援助も行っているそうです。
■ 国際化のメリット
国際化が進むと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
これは、次のようなことが考えられます。
①学生生活を送る間に、草の根的な国際理解とネットワーク化が進む。
②国内の学生よりも優秀な学生を呼び寄せることも可能で、大学や地域・国の活力が増す。
②に付随することですが、グローバルなリーダーが育てば、
本人のみならず、教育を施した側の大学にも
色々なメリットが生じます。たとえば九大の例では、
台湾出身で九大OBのロバート・ファンさんが
シリコンバレーで成功し、九大の同窓会に
大口の寄付を頂いたという身近な話がありますが、
米国の大学では桁違いの数の成功者が桁違いの金額を寄附し、
その資金が大学の魅力アップやのために使われ、
ひいては大学の外部評価の向上、
ブランド力のアップに大きく貢献しているのです。
■ 閉鎖的な日本の大学
残念ながら、日本の大学は国際化の面では
まだまだ閉鎖的と言わざるをえません。
日本学術会議の前会長の黒川先生は、
大相撲を引き合いに出して
日本の大学の閉鎖性に警鐘を鳴らしておられます。
かつて大相撲では、外国人力士が最初に横綱になるときに
大きな議論が巻き起こりましたが、
現在では幕内力士42人中13人(32%)、
三役以上は10人中4人(40%)が外国人で、
横綱は朝青龍一人なので外国人率100%と、
あれよあれよという間にグローバル化が大きく進み、
結果的に新たな相撲の魅力と活力を生み出しています。
しかし、これに比べて大学は・・・
というのが黒川先生のボヤキなのです。
保守的だといわれる大相撲ですら
国際化によって新たな活力を生み出しているのに、
日本の大学というのはまだまだ国際化、
人の流動化が足りないということなのです。
黒川先生もおっしゃるように、
このまま閉鎖的に日本の大学が存在し続けると、
日本が世界から取り残されてしまうということにもなりかねません。
日本の大学の人材の国際的流動化の進展が強く望まれるところです。
分野: 高田仁准教授 |スピーカー: