QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

星野裕志教授一覧

標準化と適応化-グローバルに展開するビジネスの難しさ (国際経営/星野)

06/10/02

■各国の違いにグローバル企業はどう対応するか
先日、北欧を旅行していて、
それぞれの国の差異性(違い)ということを
強く意識する機会がありました。当然かもしれませんが、
隣り合う国でも衣食住の違いはありますよね。
グローバルに活動する企業は、
製品やサービスを顧客に提供する際の調整として
「標準化と適応化」、あるいは市場適応ということを
長く大きな戦略的な課題としていました。
今回はこの「標準化と適応化」とは
どういうことなのかを説明したいと思います。


■標準化と適応化という戦略
標準化とは、簡単に言えば
市場の共通性に着目して、同一の商品を
広く世界の市場で販売することです。
あるいは自国と均質性の高い市場を
ターゲットとして、物やサービスを販売することですね。
それに対して適応化とは、
その反対の言葉で、それぞれの顧客の
嗜好の違いに注目をして、それぞれの市場で
受け入れられる商品を提供するということです。


1980年代の前半には著名な研究者によって、
これからは世界中の消費者が同一の商品を
使用するようになる。つまり世界は標準化に向かうと
提起しましたが、実際にはそうなってはいません。
例えばヨーロッパを旅行されていて、
それぞれの国の違いって感じられるかと思います。
やはり、ヨーロッパで市場統合がおきても、
それぞれの国の持つ国民性や習慣、文化や経済の水準が
異なりますので、企業が販売する同一の商品が
ヨーロッパのどこででも等しく受け入れられることにはなりません。
ただ標準化か適応化かという単純な二律背反だけでなく、
両方のバランスが重視されることがもちろん重要だと思います。


■カップヌードルの適応化の例
ここではカップヌードルの例をとって説明します。
世界80カ国以上で販売されるカップヌードルの中身は、
チキン、ビーフ、シュリンプ、魚、野菜など様々ですし、
その麺やスープの量、フレーバーは多様です。
さらにインドネシアでは、ハラールと言われるイスラム教徒に
配慮した食材が使われますし、インドではカレー味。
タイではスパイシーなトムヤンクン味になるわけです。


ある国では食事として食べられるところもあれば、
スープやスナックとして食べられる国もあります。
そう考えると、発砲スチロール製のカップの中に、
粉末スープとフリーズドライ化された具材が入っているという
カップヌードル自体のその特長は世界共通ですが、
それぞれの市場に配慮した適応がなされていることになります。


■標準化と適応化の長所と短所
企業にとって、標準化の利点は、非常に大きいと思います。
なぜかというと、自社で開発して生産した限られた商品が
世界の市場で顧客に同時に受け入れられるのであれば、
大量生産による規模の経済性も享受出来るからです。
同じ規格で作り、それを輸出していけばすみますので、
開発費も比較的少なくて済むわけです。


もちろん欠点もあります。食品の商品でいえば、
独自性が少ないことから個別のニーズに対応して、
顧客に高い満足度を与えることができません。
もし細やかにニーズを汲み取ったライバルが出てくると、
これに対してなかなか対抗しづらいということにもなります。


一方で、適応化の利点とは、この標準化のちょうど正反対になります。
設定したターゲットの嗜好を満たす商品を提供することで、
より満足度を高めることが可能となります。
その反面、コストが高くなり規模の経済性が
期待出来ないことになりますし、グローバルなブランドとして
認知されることも難しくなります。
 

実際には、標準化か適応化かという
単純な選択ではなく、両者のバランスを取ること。
あるいは適応化するべき部分は適応して、
標準化の可能な部分は標準化する。これは企業にとって
非常に大きな選択ですが、ハイブリットなアプローチが
企業には求められていると言えます。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP