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金融機関の産学連携 (産学連携/高田)

06/09/14

 産学連携と言うと、みなさん
ついつい工学系や医学系に特化して
考えがちがちではないでしょうか?

 しかし、金融関係においても
産学連携への取り組みが少しづつ進みつつあります。


■ 産学連携に取り組み始めている地域の金融機関

 私はグーグルのニュース配信サービスを利用しているのですが、
「産学連携」のキーワードで送付されてくるニュースには、
金融機関が地域の大学や公的研究機関と
連携するという話題がかなり多く含まれています。


 例えば、「○○銀行が○○大学と連携し、
地域の産業活性化プログラムをスタートさせる」
とか、「○○信用金庫が○○高専と連携し、
地域のものづくり競争力アップを図る」
といった感じのものです。
どうやら、全国津々浦々まで、地域の金融機関が
産学連携に取り組み始めているようです。


■ リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム

 そもそも、なぜ金融機関が産学連携に着目しているのでしょうか?
最も大きな理由としては、平成15年3月に金融庁が出した
リレーションシップバンキング
機能強化に関するアクションプログラム」
の影響が考えられます。


 「リレーションシップバンキング」とは、
地域密着型の金融機関が地元企業に対して
きめ細かいサービスを提供することを指します。


 全国の金融機関は、バブル崩壊以降続いていた
不良債権処理からようやく抜け出しつつあるところですが、
一方で中小企業への「貸し渋り」や「貸し剥がし」
などの問題が数多く指摘されました。


 この問題に対し、金融庁がアクションプログラムを策定し、
この中で、新たな創業や新規事業を支援するために、


①企業の将来性や技術の目利きが出来る人材の育成

②中小企業が有する知的財産や技術の優良案件を発掘するための
  産学官ネットワークの構築

③「産業クラスター 」形成のための交流の場の形成

④ベンチャー育成支援のため日本政策投資銀行や中小企業金融公庫、
  商工中金と連携した協調融資の強化、


といったことの実施が促されています。


■ 産学連携の具体的な動き

 例えば、東海財務局の管内の金融機関では、
支店長クラスの行員50名を
地元大学の産学連携協力員として養成し、
知的財産の橋渡しを12件実現したり、また、
別な銀行ではベンチャー向けに
10億円のファンドを設立したりしています。


 また、大阪では、大学の学生が設立した
技術系ベンチャーに対して、ある信用金庫が
600万円の無担保融資を実施したりしています。
もっとも、無担保で学生に600万円というのは
さすがにリスクが高すぎますから、
自治体の保証制度を活用している
というカラクリはあるのですが。


 現実には、リスクをとって有望企業を育てる
という風土の形成はまだ緒についたばかりというところです。


■ 地元企業の育成は地域金融機関の基本的役割

 米国などを見てみると、ベンチャーが多数入居する施設で、
地元金融機関がベンチャーに対して無償で経営アドバイスを行う、
という活動が当たり前に行われ、
地元企業を育てるという取り組みがなされています。


 そもそも多少のリスクは覚悟の上で
地元企業を育てるということは、地域の金融機関の
最も基本的な役割であったはずです。
というのも、将来の優良取引先を積極的に育てないと、
金融機関は地域で仕事がなくなってしまう
という事態にも繋がりうるからです。


 日本では高度成長期からバブル期までは
右肩上がりの成長が続きましたので、
さほど手をかけなくても企業は成長してくれました。


 しかし、現在は地域産業を巡る環境は
全く様変わりしてしまいました。
これまでは、担保がどれだけあるか
ということを確認し、その担保金額を上限に
融資をするということを中心的にやっていたわけですが、
これからはそれだけでは企業は育たないということです。


 今後は、有望な産業を地域の産学官+金融機関が
一丸となって育てるという仕組みを形成できた地域が、
活力の恩恵にあずかることが出来ることでしょう。
その中で、大学が地域金融機関と地元企業の橋渡しを行ったり、
目利きに協力したりということで、
大学は一つのキープレイヤーとなっています。
日本の金融機関の今後の一層の取り組みに期待したいと思います。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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