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夕張破綻と自治体の将来 (村藤/財務)

06/08/25

今日は夕張市の財政破綻と、自治体の将来について。


■ 財政再建団体の指定の新たな指標


みなさん夕張市の財政破綻のニュースは記憶に新しいと思いますが、
ちょうど一週間前、総務省が財政危機に陥った自治体を
財政再建団体に指定する新たな指標というのを作りました。


今回、赤池町以来約15年ぶりに夕張市が破綻するという見込みになりましたが、
財政的に危ない自治体は、実際のところは夕張だけでなく、
他もたくさんあるのではないかという心配を総務省が抱いたということでしょう。



■ 夕張市は現段階では財政再建団体ではない

6月、夕張市議会において、市長が財政再建団体に指定してもらうように
総務省に申し込みたいという意思表示をしました。


この財政再建団体というものですが、申請後、総務省により
財政再建団体の指定を受け、その後再建計画を作成し、
市議会や総務省がそれを認めると、再建が始まるという手続になっています。


夕張市は現段階では申請も承認もされたわけではないので、
まだ財政再建団体ではありません。
夕張市はあくまで6月、申請する旨を市議会にて意思表示し
(この結果大きな騒ぎとなりましたが)、
7月には今年中に申請するという意思表示を行ったに過ぎません。


■ 夕張市

そもそも夕張市とは、どういうところかということですが、
ひとつは「夕張メロン」の夕張市として有名ですが、
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭という映画祭などでも知られています。


夕張にはかつて福岡の赤池町と同じく炭鉱があり、炭鉱の町として有名でした。
しかし現在では炭坑はなくなってしまっています。

炭鉱のある頃、人口は12万人ほどいましたが、
炭坑がなくなってしまうと、人口は10分の1の15000人程度にまで減ってしまいました。


炭坑がなくなったので、夕張市は観光業に力を入れ始めました。
炭坑の穴を観光で埋めましょうということで、
借金をしながら観光の為の施設を山のように作ったわけです。
しかし、これが破綻の大きな原因となってしまいます。


■ どのような自治体が財政再建団体になるのか?

そもそも、どういうところが財政再建団体になるのかということですが、
当然のことながら、赤字が大きいところがその予備軍です。


これくらいの人口になるとこれくらいの財政が必要だなという、
いわゆる「標準財政規模」というものがあります。
市町村の場合には、標準財政規模の20%を超える赤字が生じ、
申請が受理されると、再建団体の指定を受けることになります。


■ 財政再建団体になるとどういうことが起きるのか?

財政再建団体になると、7年以内の再建を目指す
再建計画を作成しなければいけません。
ちなみに、赤池町は財政再建に10年ほどかかっています。


通常、自治体のサービスとしては、
値段が安くて高いサービスというのがいいに決まっています。
ところが、財政再建団体に指定されると、
財政再建のために値段が非常に高いのにサービスが低い
というようなことが起こりえます。


たとえば、使用料や手数料などが妙に高いという事態が生じてきます。
また、水道料金や保育料、市営住宅の賃料などといったものが
みんな上がってきます。


自治体の人達は当然責任をとらなければなりませんから、
職員給与や退職金といったものもカットされます。
こうなってくると、夕張市の人にとって もはやいいことは何もないな…
という状況になってきます。


■ 自治体に内在する問題

そもそも、財政的に危ない自治体というのが
本当に夕張市だけなのかということが危惧されます。
既述のように、総務省もこのことを心配はしているのですが、
自治体の財務の実態というものが見えないのが現状なのです。


民間企業だと、いくらお金を持っているのか、いくら借りているのか、
この期にはいくら入って、いくら出ていくのかということを記述した
「バランスシート」というものがあるのですが、政府や自治体にはこれがありません。


政府や自治体の財務というのは、我々の家計と一緒で、言うなれば
小遣い帳しかつけてないようなものなので、現金でいくら使う予定で、
いくら使ったという程度でしかありません。これでは財務の実態というものは見えてきません。


こういう問題に対応するために、総務省は自治体の財務書類を作ろうとしていますが、
これまでの総務省方式は発生主義や複式簿記に基づいておらず、
財務の実態が見えるようになるとは思われません。


民間企業会計の発生主義、複式簿記、連結主義や時価主義を原則として
採用した公会計基準を法制度としてパブリックセクターに早く導入することが期待されます。


もう一つの問題として、これは多くの自治体について言えることですが、
中央、言うなればパパにお金を援助してもらって色々なものを作るという癖が
付いてしまっているということがあります。


その癖をやめて、自治体が自立していくということも必要でしょう。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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