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香港電話会社の買収合戦 (村藤/財務)

06/08/18

今回は海外に飛び、
香港の電話会社の買収合戦の話を
していきたいと思います。


■ リチャード・リー会長、パシフィック・センチュリー株売却

香港の固定電話会社最大手、
パシフィック・センチュリーのリチャード・リー会長が、
投資銀行家のフランシス・リョンに
パシフィック・センチュリーの株の23%を
約1400億円で売却することにしたという記事が
先日日経新聞の小さな囲み記事で出ました。


■ パシフィック・センチュリー

はじめに、パシフィック・センチュリーやリチャード・リー、
あるいはフランシス・リョンが一体何者なのか
ということについて説明したいと思います。


パシフィック・センチュリーというのは
香港最大の電話会社で、
シンガポールテレコムと争って
香港テレコムを4兆円くらいで買収し、
NTTに次ぐアジアで2番目の電話会社になった会社です。
当時、シンガポールテレコムが
香港テレコムを買収するのではないか
というふうに言われていたのですが、
外資に買収されるのに懸念を示し、
パシフィック・センチュリーが買収することになりました。


パシフィック・センチュリーに関して
皆さんご存知かもしれないのは、
東京にビルを持っているということです。
「パシフィック・センチュリー・プレイス・丸の内」
と言いますが、八重洲ブックセンターの向かいにあって、
フォーシーズンズ・ホテルなんかも入っています。
ちなみに、構造問題で問題になったヒューザーも
このビルの一番上に入っていました。
私がアドバイザーを勤めている
ベリングポイントというコンサルティング会社も
ここに入っています。


■ リチャード・リー

そのパシフィック・センチュリーの会長がリチャード・リーですが、
彼は香港最大の財閥の長江グループを率いるリーダー、
リ・カーシンの次男です。
リ・カーシンという方、
もともとは大変貧しかったのですが、
造花のチューリップを売りはじめて
大金持ちになった方です。
香港フラワーで成り上がった、
華僑で最も有名な財界人と言えるでしょう。


その息子のリチャード・リーが
何故有名なのかというと、
リー・カーシンの次男というだけでなく、
スターTVを立ち上げ、
5000万人以上の視聴者を獲得してから
ニュース・コープに売却したためです。
ニュース・コープと言うと
オーストラリアのメディア王のルパート・マードック。
以前、ソフトバンクと共に、
テレビ朝日に買収をしかけたことがあります。
そのニュース・コープに
スターTVを売却して大金持ちになったのが
リチャード・リーです。
そこで得た資金を元手に
香港テレコムを買収したり、
八重洲にビルを建てたりしました。


■ フランシス・リョン

そのリチャード・リーが今回
23%の株式を売却した相手が
フランシス・リョンです。
この人も有名な方で、
昔、フィリップ・トーズとともに
ペレグリンという、
アジア最大の投資銀行を立ち上げました。
ペレグリンという会社は
毎年売上が2.5倍になっていって
2兆円くらいに達したのですが、
そこで97年のアジア危機が発生、
為替も株価も半分になってしまい、
アジアのマーケットの崩壊と共に
潰れてしまいました。
このお話は「アジアの隼」という
小説にもなっていますが、
フランシス・リョンは
そのペレグリンの社長です。
私がペレグリンで働いていたときの
直属の上司でもあります。


■ 今回の買収の経緯

フランシス・リョンが今回どのような理由から
パシフィック・センチュリー株を買ったのかということですが、
パシフィック・センチュリーの20%を持っている
チャイナネットコムという電話会社が、
マッコーリーバンクというオーストラリアの投資銀行が
パシフィック・センチュリーを買収しようとしていたのを
嫌悪したことに起因します。


チャイナネットコムというのは
中国の固定回線の電話会社で、
裏に中国政府がいると思われています。
中国政府としては、
電話のような大事な事業を
外資に買収されるのは絶対嫌だということで、
チャイナネットコムに反対させました。
具体的には、チャイナネットコムが
ホワイトナイト、白馬の騎士として
フランシス・リョンを連れてきて、
とりあえずパシフィック・センチュリー株を
買わせたということです。


つまり、マッコーリーバンクという
外資の会社を追っ払ったというのが
今回の事件ということになります。
外資による買収を阻止したという意味では、
シンガポールテレコムが
香港テレコムを買収できなかった時と
同じ構図であると言えるでしょう。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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